呼吸器外科

呼吸器外科

特色

胸部臓器全般、すなわち肺、食道、縦隔、胸壁、横隔膜などの疾患の治療を中心に診療を行っています。中でも肺癌、転移性肺腫瘍、食道癌などの悪性疾患が全症例の80%を占めています。また他病院とは違って胸腔内臓器である食道も当科が担当しています。
胸部悪性疾患の治療は外科手術単独で完結することは少なく、呼吸器内科、放射線診断科、放射線治療科などとの連携が必要です。当院は日々の診療においても気軽に意見交換ができる体制にあり、診断の段階から呼吸器内科、放射線診断科、放射線治療科と検討会を持ち、診断方法、診断結果ならびに治療方針を討議し、スタンダードかつ症例に応じた最良の治療を決定します。
平成23年以降は胸腔鏡手術を基本としております。通常の肺癌に対する肺葉切除はほとんどの症例で完遂できていますし、腫瘍径の小さな肺癌に対しては肺機能温存の目的で積極的に区域切除等の縮小手術を施行しています。良性疾患(自然気胸、良性縦隔腫瘍など)は胸腔鏡手術を第一選択とし、手術侵襲の低減、早期退院に向け努力しています。一方残念ながら根治手術ができない症例に対しての姑息的治療としてのステント留置も主に当科が担当しています。当然これらの症例に対しての放射線治療や化学療法も呼吸器内科と同様当科でも施行しています。

~ メディア紹介 ~

  • 週刊朝日『手術数でわかる いい病院 2016』に掲載されました。
  • 肺がん手術数において近畿25位(大阪市6位)にランキング
  • 食道がん手術数において近畿28位(大阪市11位)にランキング

関連治療施設/装置

  • ICU
  • 64列マルチスライスCT、3.0テスラMRI、RI診断装置、Nd-YAGレーザー装置、超音波電気メス、胸 腔鏡システム、気管支鏡システム、人工心肺装置、補助体外循環装置、ライナック治療装置

治療実績 診療実績

原発性肺がん

  1. 年間手術数:55例(完全鏡視下手術率94.5%)(2023年)
  2. 治療法:臨床病気により治療法は選択します。StageIまたはIIの肺癌に対しては完全鏡視下手術による肺葉切除を基本としています。しかしT1a(直径20mm以下)期の比較的早期の腫瘍に対しては、腫瘍の存在位置により縮小手術である拡大区域切除術を行うこともあります。本術式は術後の呼吸機能の損失が軽微であり、適応を選べば根治性を損なうことはない有用な手術法と考えています。T1b(直径20mm以上)期以上の症例に対しては肺葉切除術後に抗癌剤治療を追加します。2012年の肺癌学会のガイドラインに沿って、T1b期は内服抗癌剤を追加し、stageIB以上は点滴の抗癌剤を追加することが多いです。また場合によっては放射線治療を付加することもあります。StageIIIa以上の進行例に対しては術前化学療法、放射線療法の後に縮小した場合には手術を行います。また縦隔進展型のstageIIIb肺癌に対しても補助循環下に完全切除を目指しています。
  3. 治療成績
    2017年-2023年の5年生存率
    (肺癌取扱い規約第8版準拠)
    0期 94.3%
    Ⅰa1期 95.2%
    Ⅰa2期 84.9%
    Ⅰa3期 87.4%
    ⅠB期 95.2%
    ⅡA期 70.0%
    ⅡB期 69.9%
    ⅢA期 79.1%
    ⅢB期 対象患者が少ないため算出なし
    ⅢC期
    Ⅳa期
    Ⅳb期

    肺癌取扱い規約の改定(2017年1月)による変更後のステージ分類で抽出

    他病死を含む

  4. 手術、治療法の適応基準:呼吸器内科との検討会で病期分類を行い、IIIa期までは手術を前提として治療します。IIIb期、IV期の症例は化学療法、放射線療法により病期が改善したものに対しては手術を考慮する事があります。

気胸

  1. 年間手術数:23例(突発性12例 肺気腫等続発性11例)(2023年)
  2. 治療法:原則として胸腔鏡下手術を行います。再発例や巨大肺嚢胞、胸腔内癒着等複雑例に対しては小開胸を追加することもあります。
  3. 治療成績:手術死亡、在院死亡、重大な合併症は認めていません。しかし胸腔鏡下の再発率は開胸手術と比較してやや多く、再発例に対しては積極的に再発防止策を施行しています。

縦隔腫瘍

  1. 年間手術数:7例 (2023年)
  2. 治療法:良性腫瘍に対しては胸腔鏡手術を基本としています。神経鞘腫の場合は機能温存を可能な範囲で優先しています。悪性腫瘍に対しては周囲臓器の合併切除を必要とする場合が多く、開胸術により確実に安全に完全切除が行えるようにしています。
  3. 治療成績:手術および在院死亡はありません。神経鞘腫の症例も特に重大な合併症は認めていません。また現在のところ悪性腫瘍も再発は認めていません。

転移性肺腫瘍

  1. 年間手術数:4例(2023年)
  2. 治療法:原則として胸腔鏡にて部分切除術を基本としています。しかし場所や大きさにより肺葉切除または区域切除となる場合もあります。また多発例や腫瘍の同定が難しい場合は小開胸を追加することもあります。また原発巣に応じた化学療法を追加することが多いです。
  3. 治療成績:原発巣が様々ですので各々に対しての症例が少なく累積生存率は検討していませんので割愛します。

食道悪性腫瘍

  1. 治療法:開胸、開腹による食道亜全摘、頸部食道胃管吻合を標準術式としています。本術式は侵襲が大きいので、最近は胸腔鏡にて侵襲の軽減を図っています。進行例は術前に化学療法を施行した後に手術を施行する場合が多いです。また血行性転移がある症例に対しては放射線科化学療法を施行しますが、再燃してきた症例に対して手術を施行する場合もあります。
  2. 治療成績:0期I期の早期の症例の生存率はほぼ100%ですが、進行癌症例の生存率は50%以下となります。

患者数(2023年度)

外来患者延数
3,216人
外来患者月平均
268人
入院患者延数
2,186人
入院患者月平均
182人
外来紹介率:79.3%

認定施設

  • 日本胸部外科学会指定施設
  • 日本呼吸器外科学会専門医認定施設
  • 日本外科学会認定施設(外科)

スタッフ体制

医師名役職専門資格
森本 真人もりもと まさと
  • 院長補佐
  • 兼 呼吸器外科
    診療主任部長
  • 呼吸器センター長
  • 呼吸器、胸部外科一般
  • 医学博士
  • 日本外科学会専門医
  • 日本胸部外科学会認定医(呼吸器)
  • 呼吸器外科専門医合同委員会専門医
橋本 章太郎はしもと しょうたろう
  • 呼吸器外科診療部長
  • 呼吸器外科
  • 日本外科学会専門医
  • 呼吸器外科専門医合同委員会専門医
  • 日本がん治療認定医機構認定医
  • 呼吸器外科学会胸腔鏡安全技術認定医
小阪 周平こさか しゅうへい
    • 呼吸器外科
      良河 光一よしかわ こういち
      • 特別顧問
      • 非常勤医師
      • 肺がん外科治療
      • 胸部外科一般
      • 食道外科
      • 医学博士
      • 日本外科学会指導医
      • 日本胸部外科学会指導医
      • 呼吸器外科専門医合同委員会指導医

      研究内容

      • 末梢型小型肺癌に対する拡大区域切除術の検討:多施設共同研究
      • 肺癌術後化学療法に関する臨床試験:多施設共同研究
      • 自然気胸術後再発に関する研究
      • 胸壁悪性疾患に対する胸壁切除、再建術に関する検討

      連携医療機関の先生方へ

      どのような疾患でもとりあえず診断をつけ必要な治療を施すことを当科の基本方針としています。当然確定診断が得られた後には適切な科へ紹介していますので、困ったときには当科へ紹介していただければ誠心誠意対処いたします。
      肺がん患者さまに対しても、外科医ではありますが抗がん剤治療も積極的に行っていますので、紹介していただければ呼吸器内科と相談しつつ治療していきます。手術適応があるかどうかは気にせず当科へのご紹介をよろしくお願いします。

      なお、医療従事者向け会員登録サイト「m3.com」内にも当科紹介記事を掲載しています。
      下記URLよりご参照ください。(※閲覧にはm3会員IDでのログインが必要になります)
      https://renkei.m3.com/articles/424