住友病院のがん診療について
大阪府がん診療拠点病院とは?
住友病院は、制度開始初年度である平成21年4月に「大阪府がん診療拠点病院」に指定され、現在に至っております。住友病院は「大阪府がん診療拠点病院」として、がん治療水準の向上に努めるとともに、緩和ケアの充実、在宅医療の支援、がん患者・家族等に対する相談支援、がんに関する各種情報の収集・提供等の機能を備え、地域におけるがん医療の充実に貢献して参りました。また、「国指定がん診療連携拠点病院」と連携、協力することで、広く大阪府全体におけるがん医療水準の向上にも貢献すべく、日々努めております。
がん治療について
手術治療
手術療法、化学療法(抗がん剤治療)、放射線療法をあわせて、がんに対する三大療法といいます。また近年、第4の治療法として免疫療法が出てきました。
手術療法は、メスでがん組織を切り取ってしまう治療法です。がんの病巣だけではなく、目に見えないがん細胞が移っているかもしれない周囲の組織やリンパ節を含めて切除することが最も一般的です。また、再発病変を手術で切除することもあります。手術療法のメリットは、完全に切除できれば体内からがんを消すことができますので、根治の可能性が高いことです。一方で、手術療法のデメリットは、体にメスを入れるため体に負担がかかることや、術後合併症が起こる可能性があること、切除する部位によっては臓器や体の機能が低下する可能性があることなどがあげられます。このようなデメリットを軽減するために、早期がんを内視鏡で切除したり、胸腔鏡下手術や腹腔鏡下手術などの鏡視下手術を行います。当院でも内視鏡下切除や鏡視下手術(ロボット支援手術:ダヴィンチ含む)などの低侵襲手術を積極的に行っております。 しかし、すべてのがんに対して手術を行うわけではなく、病期 (ステージ)が進んでいる場合は、抗がん剤治療(化学療法)や放射線療法などを組み合わせて、総合的に治療を進める集学的治療を行います。
化学療法
化学療法とは、抗がん剤によってがん細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりする治療法です。抗がん剤は注射や内服で全身に広くお薬が行き渡りますので、化学療法は全身の治療といえます。その目的は、①治癒を目指す、②手術の効果を高める(再発予防、術前に腫瘍を小さくする)、③進行を遅らせたり症状を緩和する、とがんの種類や進行度によって異なります。
抗がん剤には、がん細胞が分裂する邪魔することで細胞を殺すいわゆる抗がん剤、ある特徴を持ったがん細胞を攻撃する分子標的薬、ホルモンの影響で増殖するがんに対するホルモン療法薬があります。一般的には、これらの抗がん剤を組み合わせて治療が行われ、レジメンに抗がん剤の組み合わせ、投与量と日数、休薬期間が定められています。患者さまの状態に応じて、有効性が科学的に証明されたレジメンから、最も適した治療法(標準療法と呼ばれます)を選択します。抗がん剤に共通してよくみられる副作用(吐き気、血球減少など)と抗がん剤ごとに特徴的な副作用(インフュージョン反応、手足のしびれなど)があります。つらい症状を薬剤で抑えたり、生活上の工夫で症状を軽くすることができますので主治医や担当看護師にご相談ください。
放射線治療
放射線治療は、手術と同じようにがんのある部分だけを治療する方法です。放射線治療の特長は、治療を行った後も臓器のかたちや機能の温存を目指すことができること、比較的身体への負担が少ないことです。この特長により、治療を受けた後の生活の質を維持したり、ご高齢の方など体力に不安のある方でも治療の選択肢を広げることができます。放射線治療の目的は多岐にわたります。放射線治療のみもしくは化学療法と組み合わせてがんの治癒を目指す目的、手術の前にがんを小さくして手術をしやすくしたり手術の後に再発を防いだりする目的、がんによる痛みなどの苦痛を和らげる目的などです。放射線を身体にあてる方法も複数あります。大きく分類すると、身体の外側から放射線をあてる外部照射、身体の内側のがんの近傍から放射線をあてる内部照射があります。治療の目的やがんの種類、病期にあわせて、どちらかもしくは両方を組み合わせて治療を行います。放射線治療の進め方は治療方針によって様々です。広く行われている外部照射では多くの場合一週間に5回の治療を数週間継続して行います。
免疫療法(免疫チェックポイント)について
免疫療法とは、がん免疫を強化してがん細胞の増殖を抑制する治療法です。当院では、保険適応となっている免疫チェックポイント阻害剤(ICI)と言われる薬剤を使用します。がん細胞は、本来生体が有するがん免疫にブレーキをかける仕組みを獲得しており、それに働きかけてがん免疫にブレーキがかかるのを防ぐのがICIです。オプジーボをはじめとするICIにはいくつかの種類があり、臨床効果によってそれぞれのがんの種類毎に使用する薬剤が定められています。現在、何らかのICIを使用することができるがんは、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、頭頸部がん、胃がん、ホジキンリンパ腫、などです。今後も適応がん種は拡大されるものと考えられますが、それぞれの薬剤毎に使用するための条件があり、厚労省により最適使用ガイドラインが定められています。
従来の抗がん剤に比較して、長期間有効性が持続する患者さまがおられ、倦怠感や食思不振、血球減少などの副作用が少ないのが特徴ですが、時に様々な種類の免疫関連副作用が発現することがあり、使用中は注意深く観察を継続する必要があります。
造血幹細胞移植
詳しくはこちら各種「がん」の解説
疾患別のがんの概要や治療法については、以下のサイトをご参考下さい。
「国立がん研究センター がん情報サービス」緩和ケアについて
緩和ケアとは、重い病気を抱える患者さまとご家族の心と体の痛みを和らげ、より良い日常、人生を送っていただくための医療です。がんと診断されると、痛みや息苦しさなどの身体のつらさ、気持ちの落ちこみ、不安などのこころのつらさを抱える方も多いと思います。
当院では、がんに関わる医療者すべてに研修を実施するとともに、専門的なケアを提供するために、緩和ケア診療部を中心に多職種で協力して診療にあたっています。必要とされる方に、適切に緩和ケアを提供し、皆様が自分らしく過ごしていただくお手伝いをしていきます。
緩和ケアの詳細についてはこちら「緩和ケア診療部」へ
当院広報誌「Sound」で緩和ケア診療部を特集しました「Sound vol.48」
がん看護外来
がん看護外来は、がんに関する専門的な知識・技術を持った看護師が、患者さまとご家族の悩みを解決する方法を一緒に考える場所です。治療内容や療養場所を決められない、痛みや治療に関連する症状とどのように付き合っていけばいいのかなど、悩みがあればご相談下さい。予約は、主治医を通して行っております。
- 対象
- 当院通院中のがん患者さまとご家族様
- 外来
- 外来中の方 月・金(祝日除く)
- 時間
- 10:00~15:00(1回 60分)
- 料金
- 保険診療となります。
緩和ケアチームとは
緩和ケアチームは、身体・精神的苦痛の治療やケアのほか、患者さまの社会生活や家族を含めたサポートを主科と一緒に行います。当院では、身体担当医師、精神担当医師、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床心理士、MSW、管理栄養士が緩和ケアチームに所属しています。下記のような症状でお困りの方は、主治医または看護師にお伝えください。
お困りの症状一覧
- 身体的苦痛
- 痛み、倦怠感、吐気、息苦しさ、お腹の張り、食欲低下など
- 精神的苦痛
- 落ち込み、悲しみ、怒り、不眠、意欲低下など
- 社会的苦痛
- 仕事に関すること、家族内でのこと、お金のことなど
- スピリチュアル的苦痛
- 死への恐怖、自分の人生に対する問いなど
ドックのがんに関するご紹介
住友病院は人間ドックを併設しており、年間約九千名の方が受診されております。
がんを見つけ出す主な検査としては以下の通りになります。
「がん」を発見する主な検査
対象疾患 | 検査項目 | 日帰り | 宿泊A | 宿泊B |
---|---|---|---|---|
消化器がん | 腹部エコー | ○ | ○ | ○ |
消化器がん | CEA・CA19-9 | ○ | ○ | ○ |
大腸がん | 便潜血2日法(免疫法) | ○ | ○ | ○ |
胃がん | 胃透視(胃カメラに変更可) | ○ | ○ | ○ |
卵巣がん、子宮がん | CA125 | ○ | ○ | ✕ |
前立腺がん | PSA(50才以上男性) | ○ | ○ | ✕ |
対象疾患 | 検査項目 |
---|---|
乳がん | マンモグラフィ |
乳がん | 乳腺エコー |
肺がん | 喀痰細胞診 |
肺がん | 肺CT |
胃がん・食道がん | 胃カメラ(経口/経鼻) |
胃がん | 胃がんリスク判定セット |
胃がん | ヘリコバクター・ピロリ抗体検査 |
大腸がん | 大腸内視鏡検査(大腸カメラ) |
大腸がん | 大腸CT(仮想大腸内視鏡) |
子宮がん、子宮頚部がん、卵巣がん | 婦人科診察(子宮頸部細胞診+婦人科エコー) |
がんのご相談窓口
がん相談支援センターの紹介
当院がん相談支援センターでは、専門の担当者ががんに関する様々な相談を受け、問題解決に向けた支援を行っています。当院で治療中のがん患者さまご自身だけでなく、ご家族、勤務先関係者や、地域住民など、がんに関連した相談がある方はどなたでもご利用頂けます。相談は、対面相談と電話相談の二種類です。対面相談については、事前に予約して頂けるとスムーズに対応できます。料金は無料です。どうぞお気軽にご相談下さい。
がん治療後の妊娠を望まれている方へ
抗がん剤治療や下腹部への放射線治療によって卵子(卵巣)や精子(精巣)がダメージを受けることでご自身の子供を授かることが難しくなることが危惧される場合があります。
そのような方々に対して将来の妊娠の可能性を残す(妊孕(にんよう)性温存と言います)ために次のような治療方法が実施されています。
がんと告知され、その治療のことだけでも多くのことを考え選択しなければならないときに、妊孕性温存のことまで短期間でご自分たちだけで考えることには無理があります。
どうか気兼ねなく、まずは担当医にご相談下さい。妊孕性の温存が可能であろうという担当医の判断のもとに、必要に応じて婦人科もしくは泌尿器科の医師が協力致します。
就労支援とは
厚生労働省「第3期がん対策推進基本計画」において、「治療と仕事の両立支援」の方策が打ち出されました。住友病院のような「がん拠点病院」では、”主治医、会社・産業医と、患者に寄り添う両立支援コーディネーターのトライアングル型のサポート体制を構築し、患者に対し継続的に相談支援を行いつつ、個々の患者ごとの治療・仕事の両立に向けたプランの作成支援を行うこと”が求められております。住友病院「がん相談支援センター」では、上記に則り「両立支援」に取り組んでおります。
お問い合わせ
TEL:06-6443-1261(「がん相談の件で」とお申し付けください)
日時:平日 9:00~15:00
患者サロン
2024年度 患者サロン「ハピネス」開催日程
2024年も年3回(1月・5月・10月頃)、対面での開催を予定しております。
開催方法は状況によって、変更する可能性もございます。
詳細は予定が決まり次第、ホームページの「新着情報」に掲載いたします。
セカンドオピニオン
セカンドオピニオンは患者さまの権利になります。「主治医の先生に失礼になるのでは、、、」「先生に申し訳ない」といった思いに苛まれる必要はございません。主治医に話すことが難しい場合は、がん相談支援センターにお越しください。
「セカンドオピニオン外来のご案内」医療関係者の皆様へ
患者さまのご紹介については「地域医療連携室のご紹介」をご参照ください。
「地域医療連携室のご紹介」なお、医療従事者向け会員登録サイト「m3.com」内にも当院のがん診療の紹介記事を掲載しています。
下記URLよりご参照ください。(※閲覧にはm3会員IDでのログインが必要になります)
https://renkei.m3.com/articles/386
がん診療地域連携クリニカルパス
『がん診療地域連携クリニカルパス』とは、がん患者さまを地域の「かかりつけ医」の先生と住友病院医師で、診断・治療を分担し、連携しながら共同で診療する時に用いる「診療計画表」のことをいいます。患者さまが退院後に病状が落ち着いた時点から地域の先生方が日々の診察・投薬・検査を担当し、当院が節目の診察・検査を担当します。患者さまは「二人の主治医」を持つことで、きめ細やかな診療を受けることができ、患者さま自身による診療計画や経過の把握もできます。また通院時間の短縮・がん以外の病気も診ていただくことが可能なため、安心で質の高い医療を受けることができます。
住友病院では5大がん(乳がん・胃がん・大腸がん・肺がん・肝がん)に前立腺がん・膀胱がんを加えた合計7つのパスを運用しています。
がん登録
国は正確ながんの治療実態を把握するために、全国の医療機関でがんと診断された人のデータを都道府県知事に届け出る「全国がん登録」制度を2016年に開始しました。このがん登録のデータは、全国に何ヵ所のがん診療連携拠点病院を整備すればよいのか、どの年代の人にどのようながん検診を実施するのが効果的か、といった計画や対策を立てるときに役立ちます。また、データから得られた治療成績は、医師と患者さまが治療方針を考える上でも大いに役だちます。がん登録に伴う個人情報は「がん登録等の推進に関する法律」において、規定が厳しく定められ守られています。
「がん」という手ごわい病気を克服できる社会を、みんなで力を合わせてつくっていくために「全国がん登録」へのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。