婦人科

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特色

悪性、良性を問わず婦人科の腫瘍性疾患全般<子宮頸がん、子宮体がん(子宮内膜がん)、卵巣がん、子宮肉腫、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症、卵巣嚢腫(良性卵巣嚢腫)など>の治療を行っております。悪性腫瘍に対しては、手術療法に加えて化学療法、分子標的薬、放射線治療など最新のガイドラインに基づいた治療を行っています。卵巣がんの手術では、外科・泌尿器科の協力を得て積極的な手術を実施しています。また、良性腫瘍の手術に関しては、腹腔鏡手術や小切開手術、子宮鏡手術など低侵襲な手術方法や美容に配慮した縫合方法を採用しています。
利便性を考慮して、異なる手術野の同時手術(腹式子宮筋腫核出術と子宮鏡下子宮筋腫切除術、腹腔鏡下卵巣腫瘍切除術と子宮下子宮内膜ポリープ切除術など)も行っています。
外来では、子宮頸部細胞診異常・子宮頸部異形成(=子宮頸部上皮内病変carvical intraepitherial neoplasia:CIN)に対する精密検査(コルポスコピー・生検)を随時行っています。CIN1/2に対しては、HPVタイピングに基づいた検診・治療と従来からのHPVタイピングを行わない検診の両方を提示して選択していただくことで、満足度と安心感の向上を図っております。子宮頸部中等度異形成に対する子宮頸部レーザー蒸散術も外来で行っています。その他、炎症性疾患等も含めて婦人科疾患全般(不妊治療は除く)に対して対応いたします。
なお、産科診療を行っておりませんので、妊娠に関連した疾患あるいは妊娠に合併した疾患には対応しておりませんのでご了承ください。

対象疾患と診療内容

  1. 悪性腫瘍性疾患

    1. 子宮頸癌および子宮頸部異形成

      子宮頸部(子宮の入り口部分)に発生する癌で、ヒトパピローマウィルス(HPV)(性交によって感染します)が原因であることが明らかにされています。HPVの感染は決して珍しいことではなく、多くの場合は知らないうちに排除されています。HPVのうちでも癌に進行しやすいハイリスクタイプと呼ばれるものに感染し、うまく排除できずに感染した状態が持続すると、子宮頸部異形成と呼ばれる状態を経て(軽度:CIN1→中等度:CIN2→高:CIN3と進行します)数年をかけて子宮頸癌に進行します。20~30歳台での発生の増加が懸念されています。 癌に至る前の子宮頸部異形成の段階で、あるいは初期の癌(上皮内癌といい、これもCIN3と表記されます)のうちに早期に発見し適切な治療を行えば、体への負担の少ない方法で治療でき、妊娠や出産の可能な体のままでいることができます。そのためには婦人科を受診して検診を受けることが重要です。検診では子宮頸部の細胞を直接採取して検査(細胞診)します。細胞診で異常が発見されたら精密検査(コルポスコピーおよび生検)によって状態を正確に診断します。

      1. ① 子宮頸部軽度異形成:CIN1

        この段階では通常は積極的な治療は行いません。3ヵ月ごとに検診(細胞診)を行います。

      2. ② 子宮頸部中等度異形成:CIN2

        当科では子宮頸部レーザー蒸散術をお勧めしております。子宮の入り口部分の粘膜をレーザーで焼灼する治療法で、通常は麻酔は不要で、外来通院で治療可能です。もちろん保険での治療が認められております。日本のガイドラインでは、この段階で積極的に治療を行うべきであるとはされていませんが、次の段階に進行しますと小さな手術が必要になりますので(下記参照)、そこまで待たずに治療することに大きなメリットがあると当科では考えております。

      3. ③ 子宮頸部高度異形成:CIN3

        この段階になりますと、次の上皮内癌に進行する可能性が高くなりますので、上皮内癌と同じ治療が行われます。

      4. ④ 子宮頸部上皮内癌:CIN3

        子宮頸部円錐切除術を行います。子宮の入り口部分を360度円錐形に切除します。麻酔が必要となるため、短期間(3~4日間)の入院が必要となります。子宮の大部分は影響を受けずに残りますので、通常は妊娠・出産は可能ですが、手術によって不妊や流産・早産につながる場合があるとされています。

      5. ⑤ 子宮頸癌

        進行の度合いによって手術の範囲が変わり、また、リンパ節を切除するかしないかが選択されます。あまり進行していない場合(微小浸潤癌)には子宮だけを切除する手術(単純子宮全摘出術)が行われる場合がありますし、進行している場合には広汎子宮全摘術あるいは準広汎子宮全摘術が行われ、リンパ節の切除も行われます。

    2. 子宮体癌(子宮内膜癌)および子宮内膜異型増殖症

      月経の際に剥脱する子宮内膜から発生する癌で、出産の経験のない方のほうがリスクが高く、ホルモンの作用が発生に関与していると考えられています。閉経後の方に発生しやすい癌であるとされていますが、発生する年齢の低下傾向が最近指摘されており、まれに20歳台の例もみられます。
      残念ながら定期的な検診が早期発見につながるというデータはありません。不正性器出血(特に閉経後)や下腹部痛などの症状があり、超音波検査などで必要であると判断された場合に検査が行われます。
      治療は原則的に手術が行われ、進行の度合いによって、単純子宮全摘出術、準広汎子宮全摘術あるいは広汎子宮全摘術が選択され、多くの場合リンパ節の切除も行われます。先に述べたようにホルモンの作用が関連していますので、原則的には両方の卵巣・卵管も摘除されますが、手術を受ける方の状況によっては摘除しない場合もあります。進行の度合いによっては、手術後に化学療法(抗がん剤)が行われます。

    3. 卵巣癌、卵管癌、腹膜癌

      卵巣癌は、その名のとおり卵巣から発生する癌です。出産の経験のない方のほうがリスクが高いですが、経口避妊薬を使用するとリスクが低下するとされています。
      早期発見が難しく、また、定期的な検診が早期発見に役立つというデータもありません。多くの場合、腹部膨満感や下腹部痛などの症状で受診されて発見されます。子宮内膜症(チョコレート嚢胞)からの卵巣癌の発生が、最近注目されています。
      原則的に手術が行われ、ほとんどの場合手術後に化学療法(抗がん剤)が行われます。化学療法後に2度、3度と手術が行われる場合もあります。
      卵管癌はまれな癌です。診断が困難で、手術によって明らかになる場合もあります。卵巣癌と同様の治療が行われます。
      腹膜癌は、卵巣癌と非常によく似ているため、婦人科が取り扱うことが多く、卵巣癌と同様の治療が行われます。

  2. 良性腫瘍性疾患

    1. 子宮筋腫

      子宮の壁を構成している筋肉系(平滑筋といいます)の細胞から発生する良性の腫瘍で、30歳以降に非常によくみられるものです。多発しやすい傾向があります。過多月経、月経痛、下腹部膨満感、頻尿、腰痛などの症状の原因となる場合があります。増大する方向性によって、粘膜下筋腫、筋層内筋腫、および漿膜下筋腫に分けられますが、これらが混在している場合もあります。

      1. ① 粘膜下筋腫

        子宮の内側に向かって増大した子宮筋腫で、小さくても過多月経の原因となりやすく、不妊の原因となる場合もあります。直径5cm以下で、50%以上が子宮内に突出している場合は子宮鏡手術で子宮筋腫だけを切除することが可能です。子宮鏡手術であれば、開腹の必要がないため体への負担が少なく、3~4日間の入院期間で治療ができます。5cmを超えるような場合は当院では子宮鏡手術の対象とはしておらず、筋層内筋腫と同様の手術(下記参照)が必要となり、手術後の妊娠は帝王切開術が必要となります。したがって、あまり大きくならないうちに手術を考えたほうが賢明です。

      2. ② 筋層内筋腫

        子宮の壁の中で増大した子宮筋腫で、子宮全体が大きくなってしまうことが多く、過多月経や月経痛、下腹部膨満感・下腹部痛、頻尿の原因となることがあります。大きさだけでなく症状の程度を考慮して手術を行うべきかどうかが判断されます。症状が軽微であればよほど大きくならない限り経過観察でよく、逆に大きくなくても症状の強い場合は手術が考慮されます。
        手術には子宮筋腫だけを切除する方法(子宮筋腫核出術)と子宮全摘術とがあります。子宮筋腫核出術の場合、当科では小切開手術(約6cmの下腹部横切開)を行っており、リスクが少ないと考えられる場合には腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術(LAM)も行っております。
        子宮全摘術の場合も、手術を受けられる方とよく相談して、可能であれば、腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)、腹腔鏡補助下腟式子宮全摘術(LAVH)、腟式子宮全摘術(VTH)など侵襲の少ない手術を子宮筋腫の状態に応じて選択しています。子宮全摘術の場合、卵巣を残せばホルモンの状態は手術前と変化はありません。
        不妊の原因になったり、妊娠中のトラブルの原因になったりする場合があるので、あまり大きなものは妊娠する前に手術(子宮筋腫核出術)をしたほうがよい場合がありますが、手術をした結果として出産は帝王切開術が必要になる場合もありますので、本当に手術をしたほうがよいのかどうか慎重に判断し、ご本人やご家族とよく相談して結論を出しています。

      3. ③ 漿膜下筋腫

        子宮の表面に発生し、子宮の外部に向かって増大した子宮筋腫で、月経に関連した症状の原因となることは少なく、周辺を圧迫することによって頻尿や下腹部膨満感、腰痛など症状の原因となります。
        よほど大きくならない限り経過観察でよく、症状の強い場合には手術が考慮されます。
        手術に関しては前項を参照してください。

    2. 子宮腺筋症

      本来子宮の内面に存在していて月経の際に剥脱する子宮内膜と非常によく似た組織が、子宮の壁の中に発生する疾患で、月経痛の原因となります。子宮全体が大きくなるため、過多月経の原因となる場合もあります。
      症状が軽微な場合には対症療法が行われます。
      症状の強い場合には、通常はホルモン療法が最初に選択されます。低用量ピル、黄体ホルモン療法、偽閉経療法などが行われます。
      手術では、病巣と正常部分を肉眼的に判別することが困難なため、病巣を完全に切除するためには子宮全摘術が行われます。

    3. 子宮内膜症

      本来子宮の内面に存在していて月経の際に剥脱する子宮内膜と非常によく似た組織が、子宮以外の場所に発生する疾患で、多くの場合は卵巣や卵管、骨盤内の腹膜などに発生しますが、まれにリンパ節や臍部、肺などにも発生します。
      症状の主体は月経痛で、卵巣に発生した場合には、血液の貯溜した嚢胞を卵巣に形成します(チョコレート嚢胞)。
      症状が軽微な場合には対症療法が行われます。
      症状の強い場合やチョコレート嚢胞が存在する場合には、通常はホルモン療法が最初に選択されます。低用量ピル、黄体ホルモン療法、偽閉経療法などが行われます。
      手術では、病巣の除去を目的として多くの場合腹腔鏡手術を行います。
      チョコレート嚢胞の癌化(卵巣癌)が最近注目されており、40歳以上の方で直径が4cm以上ある場合は手術を考慮することが勧められており、直径10cm以上の場合は年齢に関係なく手術が勧められています。

    4. 卵巣嚢腫

      若い方によくみられる卵巣嚢腫に、成熟奇形腫あるいは皮様嚢腫と呼ばれるのものがあります。脂肪成分を主体とした内容液で、通常は良性ですが、かなり高齢になられたころに悪性化する(卵巣癌)ことがあり、自然に消滅することはないため、大きさに関係なくいつか手術をする必要があります。当科では、腹腔鏡手術と小切開手術(約2.5cmの下腹部横切開)の2種類の手術方法で対応しており、手術を受けられる方に選択していただいています。いずれの場合も通常は病巣の切除のみを行い、正常部分を残します。
      排卵後に一時的に卵巣が腫れて、その後自然に正常に戻っていくことがよくあります。このため、直径が7cm以下の卵巣嚢腫で内容液が水に近い成分で脂肪を含まず、かつ、卵巣癌を疑わせる所見も認められないときには、急いで手術をせずに経過をみる場合があります。

    5. ポリープ(子宮内膜ポリープ・子宮頸管ポリープ)

      子宮内や子宮の入り口部分にポリープと呼ばれる軟らかいイボ状の病変が発生することがよくあります。子宮内に発生したものは子宮内膜ポリープ、子宮の入り口部分に発生したものは子宮頸管ポリープといいます。ほとんどの場合は良性ですが、たまに悪性のことがあり、不正性器出血の原因になることも多いため、通常は切除します。
      子宮の入り口部分に発生しているものは通常は簡単に切除することができますが、大きなものの場合は電気メスなどを用いて切除します。
      子宮内に発生したものは子宮鏡を用いて切除します(多くの場合麻酔が必要です)。

  3. 炎症性疾患

    1. 子宮内膜炎・付属器炎・骨盤腹膜炎

      女性の場合、身体の構造の関係で、腟→子宮→卵管→骨盤・腹腔内という経路で微生物が進入する可能性があります。微生物が病原性を有していた場合、炎症が起こった部位によって子宮内膜炎、付属器炎(卵管炎・卵巣炎)あるいは骨盤腹膜炎となり、下腹部痛や発熱などの症状が発現します。ときには上腹部まで炎症が広がり、肝周囲炎や横隔膜下膿瘍などに至る場合もあります。
      原因菌としては、クラミジアや淋菌といった性感染症、大腸菌や腸球菌などの腸内細菌が多くみられます。
      治療には抗生剤が用いられますが、重症の場合入院が必要となることもあります。

治療実績 診療実績

手術実績(2019年度)

総件数 234件

悪性腫瘍および子宮頸部上皮内新生物

(件/年)

疾患名件数
子宮頸がん(広汎子宮全摘術)2
子宮体がん2
卵巣がん及び腹膜がん5
子宮頸部円錐切除44

良性腫瘍性疾患

(件/年)

疾患名件数
腹式単純子宮全摘術(TAH)24
全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)11
腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術1
腹式子宮筋腫核出術8
腹式附属器摘除術4
腹式卵巣腫瘍切除術5
腹腔鏡下附属器摘除術26
腹腔鏡下卵巣腫瘍切除術21
子宮鏡下子宮筋腫切除術17
子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術38
子宮脱手術3
その他(小手術など)22

患者数(2019年度)

外来患者延数
6,721人
外来患者月平均
560人
入院患者延数
2,123人
入院患者月平均
177人
外来紹介率:51.1%

スタッフ体制

医師名役職専門資格
鮫島 義弘さめじま よしひろ
  • 婦人科診療主任部長
  • 婦人科腫瘍
  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会
    専門医/指導医
  • 日本婦人科腫瘍学会
    専門医/指導医
  • がん治療認定医
  • (日本がん治療認定医機構)
  • 大阪府医師会母体保護指定医
西村 貞子にしむら さだこ
  • 婦人科診療部長
  • 婦人科腫瘍
  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会
    専門医/指導医
  • 日本婦人科腫瘍学会
    専門医/指導医
  • がん治療認定医
  • (日本がん治療認定医機構)
  • 大阪府医師会母体保護指定医
中江 瑠璃子なかえ るりこ
      • 日本産科婦人科学会専門医
      • がん治療認定医
      • (日本がん治療認定医機構)

      連携医療機関の先生方へ

      常勤医3名での対応ですが、大阪大学医学部産科学婦人科学教室のご協力も得ながら、十分にご納得いただける診療を提供してまいります。婦人科腫瘍専門医(指導医)2名が協力しながら、最新の知見、治療方法を導入し、さらに緩和ケアチームや他科との密接な連携のもとに婦人科がんの診療に当たっております。また、良性腫瘍に対しては腹腔鏡や子宮鏡を用いた低侵襲手術も行っております。
      ご紹介の際には、待ち時間短縮のためにできるだけ地域医療連携室を介して予約を取ってくださいますようお願い申し上げます。
      なお、産科診療は行っておりませんので、妊娠に関連した疾患あるいは妊娠に合併した疾患には対応しておりません。ご了承のほどお願い申し上げます。