
消化器外科・乳腺外科
特色
胃がん、大腸がんをはじめとする消化管疾患。胆石症、すい臓がん、肝臓がんなどの胆道系疾患。乳がん、甲状腺がんなどの乳腺内分泌疾患。痔などの肛門疾患。ソケイヘルニア。
上記疾患に対し、ガイドラインに沿った標準的で最新の治療(低侵襲手術から抗がん剤や放射線治療を加えた集学的治療まで)をインフォームドコンセントののち行っています。全身麻酔の年間手術症例は約700件でその治療成績とともに近畿地方有数の施設として知られており、特に合併症が少ないことは全国にも誇れると自負しています。
対象疾患と診療内容
消化器外科
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上部消化管
(1)胃がん、(2)胃粘膜下腫瘍(GISTなど)、(3)食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎などを中心に診療を行ってます。当院は 「大阪府がん診療拠点病院」であり、消化器内科との連携のみならず、専門の医師・看護士・薬剤師などのチームで診断や手術はもとより化学療法などを含めたより高度で専門的ながん集学的治療を提供できる体制を整え、がん診療ガイドラインにもとづく標準的な治療を基本に個々の患者さんに最適な治療を行っています。
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胃がん
ピロリ菌との因果関係が話題の疾患であり、日本では今でも罹患率は第1位、死因としては肺がん、大腸がんに次いで第3位となっています。当科では 2000年に日本胃癌学会より策定された『胃がん治療ガイドライン』に準じ、癌の進行度に応じて、内視鏡的治療、手術治療、化学療法や免疫治療などから最も効果的な治療法を選択し、症例に応じてそれらを組み合わせて行っています。
参考Hp:日本臨床外科学会 『胃がんと診断されたら』 -
内視鏡的粘膜剥離術(ESD)
当院では消化器内科にて行っています。対象は胃ポリープや早期胃がんなどの内視鏡治療が適切な病変となります。
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術) -
開腹下胃切除術
従来からの確立された治療法であり、当科では標準的な手術を安全かつ正確に行っています。
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腹腔鏡下胃切除術
数か所の小さな創からハイビジョンカメラと特殊な手術器具を挿入し、モニターを見ながら胃がんを切除する方法です。 開腹手術と比較して手術時間は多少かかりますが、ハイビジョン画質のもと精緻な手術操作を行うことができ、患者さんの負担を軽減し術後のQOL向上につながるとされます。当院では、この腹腔鏡下胃切除術をいち早く導入し、十分なインフォームドコンセントの後に、豊富な経験と先進の技術をもつ日本内視鏡外科学会技術認定医を中心としたチームにより、早期胃がんだけでなく、進行胃がんに対しても全国規模の臨床試験に参加して行っています。その結果、現在胃切除術症例の約90%以上を腹腔鏡手術で行っており、その治療成績も従来の開腹手術に劣らない結果が得られています。
腹腔鏡下胃切除術 -
ロボット支援腹腔鏡下胃切除術
腹腔鏡下胃切除術を手術ロボット(ダヴィンチ)を用いて行うものです。3D画像をもとに手ぶれのないロボット鉗子を操作することにより、さらに精密、安全な手術になります。ただし、現時点では胃がんに対するロボット支援手術は、保険適応をうけていないため、「自費診療」となります。詳細は別途お問い合わせください。
ロボット(ダヴィンチ)支援下胃切除術
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下部消化管
下部消化管外科の扱う疾患は、小腸、大腸、肛門の良性疾患から、大腸癌をはじめとする悪性疾患です。比較的、緊急手術が多く、虫垂炎(いわゆる「もうちょう」)や腸閉塞症、腸穿孔(腸に穴があく疾患)などに対して、24時間体制で対応しています。
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大腸がん(結腸がん)
大腸がんについて
近年、増加傾向にある大腸癌に対しては、原則として「大腸癌治療ガイドライン」 ( http://www.jsccr.jp/guideline/index.html、 http://www.jsccr.jp/forcitizen/index_comment.html)に沿った治療を行っていますが、いわゆる「マニュアル通り」という治療ではなく、個々の患者さんの病状だけでなく、生活背景なども考慮し、手術療法、薬物療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療、個別化治療に力を入れています。医学的治療だけでなく、患者さんがより安楽に生活していけるよう、様々な職種、専門知識・技術をもった看護師*1とともに、協力し合って治療に臨んでいます。
*1 がん性疼痛看護認定看護師、がん化学療法看護認定看護師、緩和ケア認定看護師、栄養士(NST)、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)、感染管理認定看護師(ICT)など
化学療法
大腸ファイバーによる粘膜切除術
一般的に粘膜内癌の場合に広く行なわれ、当院では外科(消化器外科)と消化器内科の共同で年間約150病変を切除しています。
腹腔鏡下大腸切除術
大腸がんに対する腹腔鏡手術
切開創が小さく患者さんの負担が少ない手術法です。治療ガイドラインでも腸管外への浸潤がなさそうな場合に行って良いとされ、多数の症例を経験しています。開腹下結腸切除術
従来の治療法。ガイドラインに沿って標準的な手術を安全かつ正確に行っています。
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直腸癌
おおむね結腸癌と同じですが、直腸は解剖学的に複雑な位置にあり、周囲の神経の走行も複雑です。そのため手術の際には人工肛門をできるだけ造らないように工夫をしまた、排尿障害や性機能障害などに対する工夫もしています。
ロボット(daVinci)支援下直腸癌手術
現在、大腸癌では、腹腔鏡下大腸切除術を主に行っておりますが、直腸癌では、骨盤内という限られたスペースで、複雑な操作を必要とするため、2019年からロボット(daVinci)支援下直腸癌手術が認可され、当院外科でも導入しております。これによって、より安全で患者さんの負担が少なく、根治性の高い手術が可能となりました。手術は、日本大腸肛門病学会指導医・専門医、内視鏡外科学会の技術認定医で、かつdaVinci Xi システムの規定のトレーニングを修了し、認定を受けた医師を中心とした専門チームが担当します。また、保険収載されている術式であり、患者さんの費用負担が、従来の手術に比べて高額になることもありません。
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大腸がん(結腸がん)
大腸がんについて
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肝胆膵
- 胆石症
最も一般的な疾患の一つで、最近ではほとんどがコレステロール系の結石です。
腹腔鏡下胆嚢摘出術
最新の治療法とはいえ全国的に広く行なわれるようになっており、当科ではすでに約4000例を経験し全国的にも有数の手術数を誇っています。基本的には入院から退院まで5日間です。
- 肝臓がん、胆道(胆管、胆嚢)がん、膵臓がん
肝胆膵領域の腫瘍は悪性度が高く、進行して発見されることもしばしばあります。肝胆膵領域の悪性腫瘍に対する手術は侵襲の大きなものが多いのですが、切除可能な症例に対しては積極的に手術を行っています。また、悪性度の比較的低い腫瘍に対しては腹腔下手術を取り入れ、できるだけ小さな傷で手術を行い、患者さんの負担の軽減、手術の低侵襲化を図っています。残念ながら切除できない症例に対しては、消化器内科や放射線治療科と協力して、個々の患者さんに適した治療法(抗がん剤治療や放射線治療など)を選択、あるいは併用した集学的治療を行っています。
- 胆石症
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鼡径(そけい)ヘルニア
鼡径ヘルニアとは、いわゆる「脱腸」です。体が未発達なお子さんの病気…と思われがちですが、実際には成人のほうがずっと多く、それも中高年に顕著な病気です。鼡径部(股の付け根)の筋肉が緩んで隙間から腸管や内臓脂肪が飛び出してきます。
以前は股の付け根を10cmほど開いて、ゆるんで隙間ができた鼡径管や筋膜の部分に、メッシュのプラグ(栓)やシートの人工補強材を入れ、飛び出してこないようにする方法を用いていましたが、歩く時に違和感を感じたり長らく疼痛を訴える方もおられました。これに対し当院では腹腔鏡手術を適用しています。手術のための傷口は3つに増えますが、それぞれが小さな傷ですので術後の疼痛が抑えられます。また筋肉の内側から医療用メッシュを貼るため、異物感も少ないようです。ヘルニアは片方の鼡径部だけでなく両方にできることがあります。両方を同時に手術する場合でも腹腔鏡なら3つの傷口だけで行えるので、患者さんの負担を抑えられます。
筋肉の隙間から飛び出した腸が戻らなくなる嵌頓(かんとん)という状態になることがあります。こうなると腸の血流が滞って壊死(えし)し、生命に関わる可能性もあります。当院にも嵌頓になって救急車で運ばれてくる方がいらっしゃいますが、こういったケースでも腹腔鏡で腸が壊死していないか確認し、安全に低侵襲な治療を提供できる場合もあります。腹腔鏡下鼡径ヘルニア修復術(TAPP法)
腹腔鏡で行う「鼡径ヘルニア」手術で、健康保険が適用されます。
- 全身麻酔で手術をおこないます。
- 小さい傷で痛みが少ないです。
- 入院は短期間です。
- 術後早期の社会復帰や運動が可能です。
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肛門疾患
- 内痔核
一言で言うと肛門部の血管が腫れる事が原因です。非常に多くの人が罹患していると思われます。坐薬などで軽快することも多いのですが、手術が必要な場合もあります。
硬化療法
注射で内痔核を縮めて治す方法です。従来の手術法に比べ痛みはほとんどなく局所麻酔で行え1泊2日で治療します。治療には特別な資格が必要で、当院でも非常に評判のいい治療法でもあります。
- 内痔核
乳腺外科
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乳腺内分泌疾患
- 乳がん
近年極めて増加の傾向にある疾患で、今や日本人女性でも最も多いがんとなっています。計算上は日本人女性の約18人に1人がその生涯のうちに患うことになります。当科でも年間約150件の方の治療を行っています。診断法の進歩も著しくマンモグラフィー検査や超音波検査、MRI検査などを駆使して、超音波検査部、放射線診断科とのチームで診断しています。また、乳がんはいろいろな臓器の癌のなかでも治療によく反応する癌の一つであり、治療方法の発達が著しい分野です。
乳房温存手術とセンチネルリンパ節生検
治療ガイドラインに沿って積極的に行っています。患者さんの負担の少ない手術といえます。術後放射線治療を併用することが多く、この点でも放射線治療科との連携が大切となってきます。
化学療法
著しく発達してきた分野です。当院では乳腺専門医もおり最新の抗がん剤やホルモン剤を駆使して手術などの補助をしています。
同時乳房再建手術
乳房を切除したと同時に形成外科と協力して背中の筋肉などを使って再建する手術です。当院でのチーム医療を象徴する最先端の手術でもあり美容上の問題を解決しようというものです。
乳房再建←(詳細はこちら)
- 乳がん
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大阪市乳がん検診
- 大阪市乳がん検診(マンモグラフィ)について←(詳細はこちら)
- 大阪市乳がん検診(超音波検査)について←(詳細はこちら)
治療実績 診療実績
消化器外科・乳腺外科 全麻手術数は年間約700例
- 胃癌では年間約 40例に根治的外科手術を行っている (その内9割を腹腔鏡補助下に行っている。) 。その他、早期胃癌に対しては、内視鏡的粘膜切除(EMR、ESD)も行っている。治療成績は全国平均と同等。
- 大腸癌根治的外科手術は年間約80例。しかも早期大腸癌に対しては、腹腔鏡補助下手術を積極的に施行している。最近では進行癌にも腹腔鏡補助下手術の適応をひろげつつある。その他、大腸ファイバーによる粘膜切除術も多数に行っている。治療成績は全国平均と同等。
- 肝臓がん、膵臓がん、胆嚢がんの根治的外科手術は約50例。
- 胆石症は腹腔鏡下胆嚢摘出術を第一選択としており年間約120例で全国有数の手術数である。
- 鼠径ヘルニアは年間約120例。全身麻酔にて腹腔鏡下にtension free repair法を積極的に行い、局所麻酔で行うこともある。
- 肛門疾患は年間約 10例。特に内痔核では1泊2日で局麻下の硬化療法を積極的に導入。痛みも少ない。
- 乳癌根治的外科手術は年間約 150例。乳房温存手術、センチネルリンパ節生検を積極的に行っている。美容上有利な同時再建術も行っている。治療成績は全国平均と同等。
患者数(2019年度)
- 外来患者延数
- 17,819人
- 外来患者月平均
- 1,485人
- 入院患者延数
- 16,033人
- 入院患者月平均
- 1,336人
認定施設
- 日本外科学会認定医修練施設
- 日本消化器外科学会認定専門医修練施設
- 日本消化器病学会認定施設
- 日本消化器内視鏡学会認定指導施設
- 日本超音波医学会認定超音波専門医制度研修施設
- 日本乳癌学会研修施設
- 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会認定
- 乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施施設
- 日本膵臓学会認定指導施設
スタッフ体制
医師名 | 役職 | 専門 | 資格 |
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連携医療機関の先生方へ
当科では、胃がん・大腸がんの消化管悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術、肝・胆・膵悪性疾患に対する拡大手術、そしてQOLを重視した乳がん手術(乳房温存手術や同時乳房再建術)を積極的に行い、合併症も少なく、患者さんからの満足度も高く評価 していただいています。現在、ロボット手術導入の準備を進めています。また、急性胆嚢炎や急性虫垂炎、イレウスなどの急性腹症に対しても積極的かつ迅速な治療を心がけています。連携医療機関様からのご紹介患者さんには十分なインフォームドコンセントを行った後、適切かつ丁寧な診療を提供させていただきたいと思っています。