
心臓血管外科
松森 正術医師が「The Best Doctors in Japan」に選出されました
特色
成人の心臓、大動脈疾患、末梢血管疾患を対象とした外科治療を行っています。
心血管疾患は、突然に発症することも多く、迅速な診断と治療、手術が必要であり、患者さまの診察、検査及び治療がいつでも行えるよう、循環器内科や麻酔科、救急科との緊密な連携の下、24時間緊急対応が可能です。
高齢者、慢性閉塞性肺疾患、慢性透析などの様々な合併症をお持ちの患者さまに対しても、生活の質(Quality of life:QOL)の向上も目指した外科治療に取り組んでいます。当院では、完全鏡視下のMICS手術に注力しており、傷跡や術後疼痛が非常に小さく、より早期の社会復帰が出来るように務めています。
最新の心臓血管外科治療を提供するとともに、外来部門を中心に病診連携を充実させ、患者さまに満足いただける入院~通院治療を心がけています。
~ メディア紹介 ~
週刊新潮 『大動脈瘤の治療 ステントグラフト内挿術最前線』(2013.2.28)において指導医が在籍し、全例調査に協力している実施施設として当院が紹介されました。対象疾患と診療内容
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完全鏡視下MICS手術
MICS手術とは小さな傷で、小開胸にて行う心臓手術です。
当院では、開胸器※で創部に負担をかけない完全鏡視下の手術に注力しております。
従来の直視下では、創部に開胸器をかけて直視下で行うことが多いため、傷は小さいですが、術後の疼痛が問題となる事がありました。
完全鏡視下は直視下と比較しても、美容的に創部が小さいのはもちろん、開胸器をかけて無理矢理肋間を広げることがありません。そのため、術後疼痛がほとんどなく、より早期の社会復帰が可能です。
当院で行われた多数の症例で、無輸血で経過し、手術室での抜管を行い早期社会復帰を果たしています。
また、当院はJ MICS (日本低侵襲心臓手術学会)の認定施設であり
所属医師も低侵襲心臓手術認定医として、多くの経験を積んでおります。
※開胸器・・・胸部の骨の間を開いて術野を確保するための機械 -
冠動脈疾患
動脈硬化などにより、心臓の冠動脈への血液供給が不足し、酸素不足が生じる状態が狭心症で、冠動脈が閉塞し心臓の筋肉が壊死をおこした状態が心筋梗塞です。
症状としては、胸痛、胸部圧迫感、背部痛など様々です。
当院では循環器・呼吸器センターとして、循環器内科と協力して治療を行っています。- 薬物療法、カテーテルによる冠動脈形成術
- 冠動脈バイバス手術
- 『心拍動下冠動脈バイパス手術』(off pump bypass 手術)
これまでは人工心肺装置を用いて、心拍(心臓の動き)をとめて手術を行う方法が主流でしたが、当院では可能な限り人工心肺を用いずに心臓を動かさせたままで手術を行っています。 これにより人工心肺を用いた手術時に発生しやすい脳への合併症の回避に努めています。
- 『MID CAB 手術』
これまで冠動脈バイパスの術を行う場合に胸の真中を縦に大きく切って人工心肺を用いて心臓を止めて冠動脈バイパスをしていたところを、10㎝以内の比較的小さな手術創で吻合を必要とする冠動脈を出し、その手術創から内胸動脈等を確保して心臓を動かしながら冠動脈バイパスを行う手術術式です。
- 『心拍動下冠動脈バイパス手術』(off pump bypass 手術)
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心臓弁膜症
僧帽弁・大動脈弁などの心臓の弁が狭窄・逆流を生じ、心不全を呈する疾患で、高齢者の弁膜症手術が増加しています。
弁膜症手術では、可能な限り自己弁を温存した形成術(人工弁を使用せず自分の弁を修復する手術)を施行し、人工弁を使用する手術では患者さまとよく相談し各個人の生活様態にあうように機械弁・生体弁の選択を行います。 -
大動脈疾患
大動脈とは心臓の左心室から出て、胸部から腹部に連なり全身に血液を送り出している血管です。
場所により、胸部大動脈(上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈)、腹部大動脈と呼ばれています。
大動脈の壁は3層構造となっていますが、この壁が何らかの原因で脆くなり、強い血圧に耐えられなくなると、その脆くなった部分が外側に向かって膨張します。こうして大動脈が膨らんだ状態を大動脈瘤といいます。
また、壁に亀裂が生じ、大動脈全長にわたって裂けた状態を大動脈解離といいます。
瘤破裂、急性解離等緊急手術が多いのもこの疾患の特徴です。
当院では主に次の治療を行っています。
大動脈瘤の治療←(詳細はこちら)- 人工血管置換術
動脈瘤の部分を切除して、合成繊維でできた人工血管に置き換える手術です。
人工血管は合成繊維のダクロンでできており、耐久性に問題はありません。 - ステントグラフト挿入術
太ももの動脈からカテーテル(細い管)を入れ、この管を通じて人工血管を動脈瘤の部分に運び、そこに留置する方法です。
高齢者等の手術リスクの大きい患者さまには、手術の負担が少ないという利点があります。
腹部ステントグラフト(EVAR)←(詳細はこちら)
胸部ステントグラフト(TEVAR)←(詳細はこちら)
- 人工血管置換術
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閉塞性動脈硬化症
動脈硬化によって狭くなった血管を拡げ、血液の流れを改善させる治療です。
- 血管拡張術(PTA)
- ①バルーン法
風船の付いた細い管(バルーンカテーテル)を血管の中に入れて、風船を膨らませることで血管を拡げ、血液の流れを改善・維持させます。 - ②ステントの挿入
ステントと呼ばれる器具を血管の中に入れて、血管を内側から支えることで血管が狭くなるのを防ぎ、血液の流れを改善・維持させます。
- ①バルーン法
- バイバス移植術
人工血管や自分の静脈を使って、新しい血液の道(バイパス)を作り、血液の流れを保つ手術を行います。
- 血管拡張術(PTA)
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心雑音外来
近年、高齢化に伴い心不全入院を必要とする高齢者は、年々増加し、心不全パンデミックと呼ばれています。
心臓の弁が狭くなったり、逆流を起こしたりする心臓弁膜症の増加がその要因の一つです。心臓弁膜症は、初期は無症状で、進行し息切れや疲労感を認めても年齢のためと判断し医療機関を受診しないうちに進行することも珍しくありません。
また、高齢となり高度の弁膜症を放置すると、心機能は低下し、手術自体のリスクがあがり、手術不能に場合もあり、より早期での介入が重要です。
一方、心臓手術の成績は向上し、特にMICS(低侵襲心臓外科手術)では、術後早期に回復でき、リスクも低いため最近のガイドラインでは、僧帽弁逸脱などでは、無症状でも逆流が重度であれば、早期の手術が推奨されております。
当院は、MICS認定施設であり、特に完全鏡視下MICSを導入しており、術後の疼痛もほとんどなく、早期の社会復帰が見込まれるため、高齢者だけでなく就労中の患者様にとっても早期手術によるメリットが大きいと考えます。
前述しましたとおり、弁膜症も初期は無症状の事が多く、健診などで心雑音を指摘されたけど、症状がはっきりしない場合なども循環器内科と連携をとり、専門医が親身になって今後の方針を相談させて頂きます。
症状がある方は、もちろん無症状であるが、心雑音を指摘され、どうするべきか判断に困る場合など、遠慮無く来院し、相談していただければ幸いです。
治療実績 診療実績
患者数(2023年度)
- 外来患者延数
- 2,569人
- 外来患者月平均
- 214人
- 入院患者延数
- 4,714人
- 入院患者月平均
- 393人
手術実績
2019年度 | 2020年度 | 2021年 | 2022年 | 2023年度 | |
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心臓・胸部大動脈手術 | 45 | 75 | 109 | 78 | 77 |
冠動脈バイパス術
( )内 心拍動下バイパス |
6(1) | 9(6) | 29(11) | 31(12) | 32(12) |
弁膜症手術
( )内 冠動脈バイパス併設 [ ]内 自己弁温存大動脈基部置換術 |
16(3) | 33(6)[7] |
46(12) [4] |
32(12) [2] |
27(6) [4] |
胸部大動脈手術
( )内 ステントグラフト |
23(18) | 40(14) | 56(24) | 38(13) | 36(10) |
その他の心臓・胸部大動脈手術
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- | 5 | 3 | 3 | 3 |
腹部大動脈手術 ( )内 ステントグラフト
|
44(39) | 42(20) | 30(19) | 35(19) | 23(11) |
末梢血管手術 ( )内 血管拡張術 [ ]内 バイパス手術 { }内 その他 |
133 (121) [12] {8} |
160 (142) [5] {13} |
166 (148) [4] {14} |
154 (125) [9] {20} |
156 (129) [6] {21} |
低侵襲心臓手術
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- | - | - | 10 | 10 |
- 胸部ステントグラフト 165件
- 腹部ステントグラフト 412件
※2018年~2020年の実績は年度、2021年からは年での抽出となります。(ステントグラフトも年間実績)
認定施設
- 心臓血管外科専門医認定機構認定修練施設
- ステントグラフト実施管理委員会認定施設
スタッフ体制
医師名 | 役職 | 専門 | 資格 |
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研究内容
- 低侵襲心臓大血管手術
- ステントグラフトによる大動脈瘤治療
- Limb salvageのための閉塞性動脈硬化症への取り組み
連携医療機関の先生方へ
社会の高齢化、高血圧・糖尿病患者の増加などに伴い、動脈硬化を原因とする心大血管疾患、末梢血管疾患も増加しつつあります。同時に、私達が治療に関わる患者さまも高齢化し、様々な臓器機能低下、活動力低下を有する方も増加しています。高水準、良質の治療、患者さまのQOLを重視した医療を提供するため、低侵襲な治療やチーム医療を積極的に取り入れた心臓血管外科治療を行っています。
なお、医療従事者向け会員登録サイト「m3.com」内にも当科紹介記事を掲載しています。
下記URLよりご参照ください。(※閲覧にはm3会員IDでのログインが必要になります)
https://renkei.m3.com/articles/139